上達への道は話して気づく、とにかく話す機会を増やすこと

2017 . 07 . 28 / Fri

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連載:初めての海外駐在でつかんだ「マイ外国語上達法」! 上達への道は話して気づく、とにかく話す機会を増やすこと

文・写真=クボタプレス編集部

グローバル市場で活躍する日本人ビジネスパーソンの全員が、必ずしも最初から外国語が堪能だったわけではありません。語学力に不安を持ちながらミッションを背負って海外へ赴任し、どんな方法で“現場での語学力”をアップさせ、国境をまたいだ仕事を進めていったのか。そんなビジネスパーソンの「マイ語学上達法」をシリーズでお届けします!

第1回目にご登場いただくのは、アメリカ・カリフォルニアに農機の市場調査と研究開発のために赴任した、クボタ 堺製造所 トラクタ技術第一部 現行品質チームの谷村一成さんです。

海外出張したものの、「なに言ってるかまったくわからへん!」

クボタに入社以来、技術開発部門で主に北米向け中型トラクタの研究と評価を担当していた谷村さん。学生の頃から海外に興味があり、機会があれば国際的な仕事をしてみたい、と思っていたところ、入社3年目に、アメリカ・カリフォルニア州に本社(※現在はテキサス州ダラスに移転)を置くクボタ トラクターコーポレーション(KTC)へ初めて出張する機会を得ます。KTCのセールスミーティングや市場調査に参加したものの、「『なに言ってるかまったくわからへん!』という状態でした」(谷村さん)。

当時のTOEICのスコアは500点前後。
「入社後、開発担当として計測や実車作業などでトラクタを評価する仕事をしていました。トラクタを実際に使っている現場の声を直接聞かないと、正確な評価をするのは難しい。そこで、自ら市場を回りたいと思っていたんですが、いざアメリカへ出張してみたら、英語がそんな状態で……。これはなんとかしなければいけないと痛感して、とりあえずTOEICの勉強を始めたんです」

「TOEICの勉強に加えて、英語のドラマを見て英語に慣れる工夫もしてみました。主に見たのは海外ドラマの『24』。英語のセリフと日本語字幕を付き合わせながら『こんな言い方あるんや』というフレーズを中心に覚えていきました。『人質』なんて英語で覚えても、仕事で使う機会はまずないだろうな、とか思いながら(笑)」

その甲斐あって、1年間でTOEICのスコアは500点から700点へとアップ。クボタが北米やタイ、東南アジアで拡大戦略を推し進める状況も谷村さんにとっては追い風となり、初海外出張から5年後に、KTCへの赴任の機会を得ます。

「驚きとともに、市場を知るチャンスだと思いました。引っ越しの手続きなど、生活のことを先輩方にいろいろ教えてもらっていたんですが、英語についてはみんな口をそろえて、『まあなんとかなるよ』と言っていました」

意識を変える――「とにかく話す」

「TOEIC700点ぐらいあれば、仕事でそんなに困らないだろう」と思っていた谷村さん。ところが、現実はそう甘くありませんでした。着任3日後、さっそく新機種に対する現地ディーラーの意見を聞く市場調査に向かったものの、肝心のディーラーの話が英語の壁でよく理解できず。その上文法の正確さに気をとられ、頭で考えすぎて反射的に言葉が出てこない、という悪循環でした。
この “最初の洗礼”で、英語に対する意識が思いきり変わったといいます。

「大切なのは、文法の正確さなどの細かいことより、『話すことに慣れる』ことだ、と。それからは、アメリカ人のエンジニアにメールで連絡したとしても、出来るだけ会いに行って、会話するようにしました。彼らの話の中にわからない言葉があったときは、すぐに調べて、それを自分でも会話に使って覚えるようにしました」

意識が変わってからは、英語に自信がついてきたそうです。
周囲のアメリカ人社員は「なんとかなるよ」的なオープンな雰囲気。わかりやすいようにゆっくり話してくれたので、さほどストレスを感じなかったことが幸いでした。

「発音」の勉強が話す自信の追い風に

「出張時に苦労したのは発音と聞き取り。毎月1週間ぐらい、カリフォルニアからテキサス、ジョージアなどの南部、南東部、さらに中西部へと各地のディーラーを回って市場調査を行っていました。わかりやすい英語を話すカリフォルニアの人たちと違い、例えば南部の人は発音するときにあまり口を動かさないため、聞き取りづらいんです」

そこで、発音の重要性に気づいた谷村さんが通い始めたのが、いわゆる語学学校ではなく、「発音の学校」。KTCに赴任した社員が代々、自主的に通っている、正しい英語の発音を学ぶためのスクールです。

「『Lなら上の前歯の裏に舌をくっつけて“L”と発音しましょう 』とか、口の形と舌の動きを学んで、英語を正しく発音できるようにするトレーニングです。マンツーマンか、同僚と一緒にふたりで、週に一度、1年ほど通いました。残念ながら、すぐに見違えるほど上手に発音できるように進歩、というわけにはいきませんでした。ただ、習ったことは使ってみよう、話してみようという気分になるし、少し自信がついたのは確か。気持ち的にメリットが大きかったと思います」

谷村さんがアメリカ駐在時や、帰国後の現在も使用している教材

「なんとかなるさ」的なアメリカ人同僚とのやりとりに使えるフレーズ

発音を学ぶかたわら、谷村さんが「英語でどううまく伝えたらいいのか」と自分で言い回しを調べて、同僚のアメリカ人エンジニアたちと業務のやりとりをするとき、頻繁に使っていたフレーズがあるそうです。それが、just in case (念のため)

「人にもよりますが、アメリカ人社員に業務の依頼をすると、『まかしとけ!』みたいに言われるんです。それを聞くと、逆に『大丈夫か?』と心配になることがよくあって(笑)、何か頼みごとをしたときなどに使うようになりました。一応念押しをしたいなぁというときに、これを言います」

“That’s one possibility. But I think〜” (可能性はあるよね。でも僕は〜と思う) あるいは、“I agree with you, but〜” (賛成です。でも〜)なども、よく使っていたそうです。

「あくまでも前向きに気分をアゲる方向で話すようにしていました。ただ、最後にbutがつくわけで(笑)、念を押しつつ、少しでも気持ちよく仕事をしてもらいたいなぁと気持ちをこめて、使っていました」

そして常に使うように心がけていたのは、ほめ言葉。“I’m counting on you!” (頼りにしてるよ!)“Good job!” (いいね!)“I appreciate your help.” (助けてくれてありがとう)などを使い分けていたそうです。

現地では、日本ならばあまり遭遇しないトラブルもいろいろ起こります。たとえば、新製品発表の対抗機を準備するように頼んだところ、「まかしとけ!」と自信満々で返されたものの、実際には仕様が全く違う機械が届いた……といったことが。そんなとき、アメリカ人同僚たちの「土壇場のパワープレイ」に助けられることも数多くあったとか。
「彼らはとにかくピンチに強い。必要な機械が届いていなくて『これはもう無理やろ』というとき、『なんとかなるよ』と近くのディーラーに全力で掛け合って、ギリギリ間に合わせたり。私は一つひとつ積み上げていくタイプなので、とても心配になるんですが、パワープレイでその場を収めてしまう。そこはとても頼もしい。鼓舞する意味でもそんなとき、“I’m counting on you!”が効果を発揮します」

赴任前の自分にメッセージを贈るとしたら

初めての海外出張で英語の通じなさにショックを受け、自習してTOEICを200点アップ。アメリカ駐在のチャンスをつかんでからも、発音の練習や“使えるフレーズ”の積み上げなど、自分なりのやり方でビジネス現場での英語力を鍛えてきた谷村さん。帰国したあとも、『毎日の英速読』と、『毎日の英文法』という本を購入。前者は英語の聞き流しに、後者は基礎を忘れずに英語力を維持するために、本のタイトル通り本当に毎日欠かさずトレーニングしています。

ちなみに、谷村さんの奥様は、現地人の集まりに積極的に参加して英語を話すことで英語力をアップさせました。赴任当時は3歳と0歳で、英語で兄弟喧嘩をしていたというお子さんと、今でも家族みんなで仲よく英語でディズニー・チャンネルを見たりしているそうです。

「今後もチャンスがあれば、ぜひ海外へ行きたいですね。開発に必要とされる専門知識、実現する手段、市場のニーズのうち、ニーズはやはり現地へ行かないと正確に把握するのが難しい。例えばインプルメント(トラクタの動力を使用する作業機)を取り上げてみても、世界は広いですから、国や地域で種類も使われ方も全然違います。また、最新の精密農業などの現場も、実際に今どうなっているのかを自分で確かめてみたいです」

最後に、もしアメリカへ赴任する前の自分自身に会えるなら、どんなことをアドバイスするか、聞いてみました。

「正しい文法を意識し過ぎてコミュニケーションがとれなかったら、まったく意味がない。うまくなくても、文法がおかしくても構わないから、間違いを恐れず積極的に話せ。『まあなんとかなるよ』、そう伝えたいです」

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