「農家さん・食べる方、みんな元気に」 独自の玄米ペーストからパンとパスタ

2018 . 07 . 06 / Fri

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おいしくてヘルシー、米の可能性を広げる挑戦 「農家さん・食べる方、みんな元気に」 独自の玄米ペーストからパンとパスタ

文:クボタプレス編集部

西日本有数のコメの産地ともいわれる九州では、代表的なブランド米のヒノヒカリやコシヒカリ、人気上昇中の“森のくまさん”など、さまざまな品種が栽培されています。とりわけ熊本は、九州沖縄農業研究センターで開発された新規需要米のミズホチカラ、新潟から分けてもらって根付いた越のかおり(高アミロース米)も栽培可能な米どころです。その熊本で今、米の消費拡大に向けた新たな試みが展開されています。それは、玄米ペーストを原料とした玄米パン・玄米パスタ。
「地元の農業、特に米の消費拡大に貢献したい。しかし、単に米粉で何かを作るという試みならば、ほかの土地でも繰り返し行われてきたこと。一時のブームに終わらない独自性に加えて、クボタらしいユニークな技術・アプローチから商品を生み出し、農家だけでなく地域の消費者をもっと元気に」。豊富なビタミンやミネラル、食物繊維をぎゅっと閉じ込めた玄米ペーストは、その思いから開発され、玄氣堂(株式会社 熊本玄米研究所 [中九州クボタグループ])が販売する玄米パンと玄米パスタの原料に使われています。グルテンフリーで、その他食物アレルギー対策も万全の逸品は、菊池郡大津町の実店舗やオンラインストアで人気を博し、今夏、東京都渋谷区にRESTAURANT GENMAI GENKIDO出店の運びとなりました。

この日、編集部は玄氣堂 菊陽工場を訪問。製造の現場で洗米からペースト完成、調理までの全行程を見学しました。

玄氣堂
阿蘇ミルクロードの入口、中九州クボタ本社のすぐ隣にある玄氣堂大津店は、スタイリッシュな白と黒の看板が目印。
玄米ミニカンパーニュ
焼きたての玄米ミニカンパーニュがずらり。玄米塩バターパンとツートップをなす“お店の顔”は、店舗でも通販でも大人気。

「玄米でいこう」米粉を知り尽くしたプロの選択

食品会社に勤め、定年までの長い間、米粉の普及・販売業務、また食育の一環で米粉を推進する農林水産省のボランティア活動にも関わっていたという経歴の熊本玄米研究所・瀧尾佳明 取締役技術部長。今からおよそ5年前、米粉を使った新事業を検討していた中九州クボタの西山社長が、農水省の知人に、経験と知見の豊かな専門家の紹介を依頼したことが、出会いのきっかけでした。西山社長の出身地である天草を含む熊本は近年、農家の高齢化や戸数減少、休耕田の増加といった困難な課題をかかえる中山間地域が顕著化しています。地域資源を生かした農業(=稲作)の活性化を願う思いは同じ。では、地元で収穫したコメをどのように加工して付加価値を創造し、競争力の強い製品を販売するのか…… そこが悩みどころでした。

熊本玄米研究所・瀧尾佳明 取締役技術部長

食品会社での業務や食育ボランティア活動で、米粉の販売や普及に長年関わってきた専門家として、豊富な経験と見識を生かして玄氣堂を立ち上げ、今日の規模まで牽引した瀧尾部長。

――当初はクボタ側から、米粉を使って何か新しい試みをと相談されたそうですね。

「はい。なかなか厳しいなと思いました。お米を粉にする発想はよくあって、北海道・東北・関東・新潟など、既に日本各地の米どころでは、コメ消費拡大を謳って米粉を大量に生産していました。さらに熊本で立ち上げても、新鮮味や集客効果は望めないでしょう。実際、米粉ブームは落ち着き、全国的に話題性も消費量も停滞気味でした」(以下、瀧尾さん)

――コメの消費をめぐる状況は喫緊の課題ですので、残念な展開です。なぜ滞っていたのでしょうか。

「さまざまな要因が考えられます。なかでも、『米粉を利用される方(一般消費者や食品企業)にとって、米粉を使うことに何の意味があるのか』、決め手がいま一つであることが、主に影響しています。なぜ米粉でパンを焼くのか。たいていは、日本の農業を支えようとか、日本人なら米だとか、精神論によるところが大きいのです。一方、世の中にはほぼ輸入に頼る小麦粉があって、おいしい小麦のパンが簡単に手に入ります。いくら国が周知を図っても、なかなか米粉へシフトしません」

――米粉普及を促進するボランティアで各地を回られ、そのあたりの難しさを実感されたのですか。

「地元のコメを使ってパンを焼けます! と各地でいろいろお教えしました。参加者は期待いっぱいに、『米粉のパンって、栄養価が高いんでしょう?』と質問されるのですが……」

――お米の栄養ですよね?

「その通り。米粉は白米の粉なので、白米の栄養以上はありえません。ご飯と米粉パンの栄養は同じです。栄養について特別な期待をされても叶えられず、単価は当時、小麦粉よりもやや高め。パン屋さんも乗り気になれず、流通が伸びていなかったんですよ。
それでも西山社長は事業推進の意志を強くもっていましたから、いかに消費者をつかむ工夫を施すか思案し、玄米でいくしかない、との結論に至りました」

独自の玄米ペーストが誕生するまで

――玄米を粉にせず、オリジナルの玄米ペーストを生み出したのは?

「お米には、油成分が入った糠層(ぬかそう)と胚芽部分があります。それで製粉機がべたついてしまい、メンテナンスに手間がかかります。そのうえ油は酸化しやすく、粉末にしても独特の“ぬか臭”がするなど、製品化の難しさを伴います。糠を取った白米から作る米粉が市販されているのはそのためで、生の玄米粉を扱う業者は全国でもごく少数です。
業界内では焙煎玄米粉といって、焙煎した玄米を煎り米にして粉砕したものが存在し、香りづけ目的で用いられます。その場合、デンプンをアルファ化している性質から、生地の水分を吸い過ぎるため、小麦のパンに5%程度の少量しか入れられません。それでは厳密に言うと玄米入りパンですね。そこで、たくさんの玄米を使用できる“真の玄米パン”を作るために、玄米ペーストを発案しました」

――ペーストにすると、どのようなメリットが得られますか。

「糠層は、ビタミンEやフェルラ酸、ガンマオリザノールなど、栄養成分の宝庫。それらを余すところなく含んだ、消化吸収のよいペーストができます。糠(ぬか)由来の抗酸化効果により、水を介在してペーストを製造する過程で、油が酸化するのも防止され、品質も常に高く保たれます。また、デンプン質の損傷もなく風味がよく、加工適正の高い原料に生まれ変わるのです。農家を支援することに加え、食べる方の健康にも寄り添いたい、私たちのコンセプトに理想的です」

――初めから専用の機械はあったのでしょうか。

「食品をペーストにする既存の機械、例えばソーセージを練ったり、ピーナッツをすり潰したりするヨーロッパ製のコンパクトな機械をいろいろレンタルして、試作を開始。前例はむろん、パンを焼く場所もノウハウもない。製菓・製パンの原材料や加工器具の供給に強い、地元の卸問屋さんにお願いして、テストする施設をリースで借りました」

熊本産のミズホチカラ(パン用)と越のかおり(パスタ用)
玄米ペーストに使用するコメは、熊本産のミズホチカラ(パン用)と越のかおり(パスタ用)。ともに商品の加工に適した高アミロース米。
契約農家から全量買い取り、工場隣接の定温倉庫で保管。
原料となるミズホチカラと越のかおりは、播種前契約栽培されたものを契約農家から全量買い取り、工場隣接の定温倉庫で保管。
浸漬した米を水と一緒に粉砕し、ペースト状に仕上げます。
浸漬した米を水と一緒に粉砕し、ペースト状に仕上げます。パスタ用とパン用の違いは、原料米の種類だけで、製造工程は全く同じ。
菊陽工場では、洗米から玄米ペースト完成までの全行程を作業分担し、独自開発の技術と商品の品質をコントロールしています。
菊陽工場では、洗米から玄米ペースト完成までの全行程を作業分担し、独自開発の技術と商品の品質をコントロールしています。
米のデンプンを変質させないように注意しながら、粉砕・ペースト化する技術、一連の作業工程を試行錯誤で確立しました。
米のデンプンを変質させないように注意しながら、粉砕・ペースト化する技術、一連の作業工程を試行錯誤で確立しました。
オリジナルの玄米ペースト。糠や胚芽部分に含まれる豊富なビタミンやミネラル、食物繊維を余すことなく摂取できます。
オリジナルの玄米ペースト。糠や胚芽部分に含まれる豊富なビタミンやミネラル、食物繊維を余すことなく摂取できます。

短期間に緻密なレシピ研究、「玄氣堂」開業へ

――玄米ペーストは素材の部分。商品となるパンを焼き、開業まで非常に急ピッチでした。

「試作開始が2014年の1月半ば。6月開店に向けて、体制や製品を含め、3月中の店舗完成を目指していました。来る日も試作を重ねて、計画通り3月末にはパンの基本レシピが決まりました。当時は今のような設備も道具も整っていなくて、苦労しました。そして、肝心な作り手も。職人がいないとパン屋は成立しないでしょう」

――人材の確保・育成は大変でしたか。

「それまで小麦粉でパンを焼いていたプロたちが、玄米パン作りに慣れるまで、約1カ月半を要しました。最初は半信半疑で玄米ペーストを見ていた職人も、実際のレシピに挑戦し、『エッ! ちゃんとパンになるんだ』と感嘆して、皆のモチベーションと結束力が格段にアップしました。
一番難しかったのは、ペーストとパンの水分量です。現在の適量に落ち着くまで、3年かかりました。水分量は、とても重要です。特にペーストは水気の多い方が作りやすいものの、すぐに水が分離してしまいます。冷凍して戻すと水浸しになる、冷蔵庫に入れておくと水がいっぱい出る…… そのたびに少しずつ減らしながら、適性のある水分値を模索。パンも練り方や発酵時間を練り方も適宜変え、レシピを調整して、完成度を高めました。出発は店舗の採算性を考え、大津店ではパンの種類をたくさん製造可能な8割玄米パン(2割がグルテン)から始めました」

――外注を使わず、完全に自社で手掛けた理由を教えてください。

「玄米ペーストでパンを焼こうだなんて、前人未到の領域と作業です。経験者も助けてくれる人もいないので、自社でスタッフが力を合わせて完結する以外、選択肢はありませんでした。原材料の玄米ペーストは私たちのオリジナルですし、完成品の良さを信じて邁進しました。
設備に関しても、手探りで購入したヨーロッパの機械が、たった1年で壊れてしまいました。そこで、現在ここにある2台を熊本産業技術センターと水俣の摂津工業と共同で開発。玄米を使っても故障することなく、安定稼働がかないました」

アレルゲン完全対応の菊陽工場で、一つひとつ丁寧に製造される、グルテンフリー玄米パン。焼きたての香ばしい香りが立ち込めます。
アレルゲン完全対応の菊陽工場で、一つひとつ丁寧に製造される、グルテンフリー玄米パン。焼きたての香ばしい香りが立ち込めます。
玄氣堂の玄米パンは、従来のグルテンフリー・アレルゲンフリーではなかなか望めなかった、しっとり・ふんわり・もっちりした食感で、風味も豊か。
玄氣堂の玄米パンは、従来のグルテンフリー・アレルゲンフリーではなかなか望めなかった、しっとり・ふんわり・もっちりした食感で、風味も豊か。

おいしさとグルテンフリー、アレルゲンフリーを追求

――この菊陽工場では玄米ペースト、また玄米ペーストからパンとパスタを作っていて、いずれもグルテンフリー・アレルゲンフリーなのですね。

「グルテンフリーは開業以来の課題でした。食物アレルギーに配慮するにあたって、グルテンだけが要注意なのではなく、卵、乳製品、エビやカニ、落花生、大豆など、27品目もの対象があります。それらを全部遮断しました。あらゆる方に安心して召し上げっていただくため、徹底して食物アレルギー対策にこだわった商品工場にしたのです。そうなると、卵や乳製品が一切不使用となります。卵もバターもチーズも、いわゆるパンの材料としてイメージされるものが、全く使えない条件下で、『おいしい』と言っていただけるレシピを開発することが必要でした」

――(試食して)玄米パンはボソボソして硬そう、という思い込みを覆されました。この食感を出すにも、相当な苦労があったのでは?

「小麦粉が含有するグルテンはパンや麺の製造時、弾性や柔軟性を決定し、膨張を助ける重要な働きをする物質。それがアレルゲンだから、困ってしまいます。グルテンを外して歯ごたえ・口当たり・ボリューム感の良いものを作るのは、至難の業です。ふわっとしたケーキとか蒸しパンだったら焼けるので、市販されている米粉の商品は、そのような系統になりがちですよね――グルテンの作用で骨格ができるし、伸びるし、膜を作るし、本当に万能なんですよ。それなくして、膨らむパンやコシのあるパスタをどうやって作ろうか、壮大なチャレンジでした」

グルテンもアレルゲンもフリー! 高アミロース米を使用した玄米ペーストからできています。
グルテンもアレルゲンもフリー! 高アミロース米を使用した玄米ペーストからできています。
コシのあるプリプリとした食感が特長。
コシのあるプリプリとした食感が特長。シンプルな味わいは、何にでも合い、さまざまなソースやフレッシュな具材を引き立てます。

――解決の決め手になったのは?

「グルテンフリー玄米パスタは、既に確立していたペースト技術と独自開発で本邦初の新製法に適した高アミロース米(越のかおり)にめぐり合い、地元の農家さんで収穫可能となったこと。まさに奇跡というべき出会いです。
一方、グルテンフリー玄米パンは、創業以来の使い慣れたミズホチカラが最適でした。一般的な米粉のパンに比べ、小麦に近い食感がします。だいたい米粉のパンと小麦のパンの間といった感覚でしょうか。ミズホチカラのアミロース含量が、食用米とインディカ米の中間ぐらいで、ボソボソした硬さ・重さを抑えながら、ふっくらボリュームを出せる特長がグルテンフリー玄米パンに生きています。でも、ミズホチカラは炊いて食べても、おいしくないですよ。そのまま食べておいしいお米が、米粉に加工する/パンを焼く用途に適しているとは限りません。もしコシヒカリから作ったなら、お団子っぽいパンになるでしょう。ミズホチカラ玄米ペーストだと、軽く快い食感が得られます」

――今日、地元の作物にこだわりたい方や食物アレルギーに配慮される方を含め、すべての方に安心・安全・ヘルシーでおいしい商品を提供できるように。通信販売も好評ですね。

「栄養豊富な玄米が、熊本から全国の消費者にとって、よりいっそう身近な食材になるように、玄氣堂の商品を展開していきたいです。さらなる品質と生産性の向上を図り、小麦に負けないコストや栄養価競争力の確保はもちろん、新商品の開発を進めます。
健康的で楽しい食の探求からお米の消費が増え、やがては40万haにもなる耕作放棄地・休耕地の解消につながり、若い方々にも稲作/コメの魅力を感じていただけると信じ、切望しています。『農業の振興・農村地域の活性化と皆さんの健康への橋渡し役に』。それが私たちの願いです」

「玄米を身近なものにしたい」「農家も消費者も元気になってほしい」。願いを込め、丁寧に玄米ペーストや店頭商品を製造しています。
「玄米を身近なものにしたい」「農家も消費者も元気になってほしい」。願いを込め、丁寧にペーストや店頭商品を製造しています。
地元では、くまモンのようにおなじみ!? グルテンフリー/アレルゲンフリーを求めて、通販では全国にリピーターも!
地元では、くまモンのようにおなじみ!? グルテンフリー/アレルゲンフリーを求めて、通販では全国にリピーターも!

■「RESTAURANT GENMAI GENKIDO」渋谷にオープン!

株式会社トレードマークと中九州クボタ/熊本玄米研究所の出資によるレストランが、2018年6月14日、東京都渋谷区松濤にオープン。玄氣堂の玄米パン・玄米パスタ麺レシピ、熊本産の青果や肉を使用したヘルシーなランチメニューとディナーメニューを提供。グルテンフリー・アレルゲンフリーの情報提供や食育の啓蒙イベントとも提携していく予定。


明太子GENMAIパスタやGENMAIパンケーキなど、玄氣堂の玄米ペーストを使ったメニューが、早速好評とのこと。

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